筑坂人vol.12稲生さん(国際バカロレアコース卒業生)

筑坂IBコースで学んでいる一年次生が、ディプロマを取得してIBコースを卒業した先輩方にインタビューした結果をお届けします。国語の授業の一環として、インタビューのポイントや記事のまとめ方を学んだ後、自ら取材の交渉を行い、それぞれ工夫して記事にまとめています。 

インタビューに協力してくださったのは、2~3期生の卒業生です

 国際バカロレアに興味のある中学生の皆さんだけでなく、課題の多さに悩む現役筑坂生にも参考になることでしょう。それでは、どうぞご覧ください。


IB3期生 稲生七海さんへのインタビュー 

大学では何を学んでいますか。

 大学では国際関係学を専攻しています。 

国際関係学を学ぼうと思ったきっかけは何ですか。 

 元々国際関係の分野や仕事には興味があってIBを選びました。その延長線上で特にHistoryとかTOKとかの授業を通じて、物事と物事の繋がりとか出来事と出来事の繋がりっていうところにも興味を持つようになったっていうのがきっかけで、国際的な関係、繋がりを学ぶっていう学問を専攻したいなって思いました。  

学ぶことの手段として、IBのどういう学びが大学で生かされていると思いますか。

自信持って言っちゃいけない気がするんですけど、手を抜く力なのかなって思っていて。いかにずるするか、って言ったら言葉悪いですけど、いかに自分が楽をして少ない力で課題を終わらせられるか、物事を円滑に行えるか、っていうところのスキルは特にTOKとかやっていると学んだかなって思います。 

IBに入る前は)そもそも、物事をやるときに手を抜いてしまったらいけない完璧主義だっていうのもありましたし、私は中学まで日本の学校にいたので、手抜くこと=悪いこと、っていう教えがやっぱりあったと思うんですよね。ただIBやっていると、気合根性じゃ何ともなんないことしかなくって「ずるしたもん勝ちじゃん」とか、いかに「頭を使って楽したもん勝ちじゃん」とかっていうふうに心底気づかされました。この経験は今の大学生活でいかに自分が楽して良い評価、良い成績とるのかっていう姿勢に、すごい繋がってるのかなと思います。 

 IBだからこそ、普通の高校に進学していてはたられなかったことは何ですか。

 多分私が今までの中学とかの延長線上で普通高校に行っていたら、すんごいつまらない人間になっていたんじゃないかなって思っていて。というのも、IBやっていろんな人から「気が強くなったよね」って言われて、自分の意見を言うようになったり、自分のオリジナリティ、独自な考えっていうのを恥ずかしがらずに、変だと思わずに自信を持って言える力がついたりしたので、そこから考えてみると、他の人と一緒にならない自分らしさ、っていうのに誇りを持った自分の姿が出来上がったというか、それがもらえたんじゃないかなって気がします。それがIBの醍醐味。 

あとはもう一つ悪いことで言うと健康な体を失ってしまったので、不健康、本当に体も心も老けてしまったっていうのは、IBの負の遺産なんじゃないかなって思っています。 

 自分がIBを通して変化したと思う部分は何ですか。 

 今まで言っていない観点で言うのであれば、多分勉強の姿勢に関して、圧倒的に自分の勉強のやり方、自分の興味関心や考えの癖、思考の癖、っていうのを自分で気付けた、っていうのは大きく変わったんじゃないかな、と思っています。私は何か物事があると、例えば歴史的に考えちゃったりとか、すぐに責任とかの観点で物を言ってしまう癖があったりとか。 

あとは特にBiologyの授業なんですけど、数学でも勉強法をいろいろ試してみてとことん失敗を繰り返したからこそ、自分が一番能力を引き出せる勉強の仕方やルーティーン、っていうのを自分の力で見つけられたのは本当に人から教えられるよりも価値があるというか、大学になってもものすごく助けられていることなので、それは大きく得られたものなんじゃないかなって思います。 

 IBをやっていて一番苦労したことはなんですか。 

 全部。全部つらかったんですけど、何か順番をつけるとしたら多分、高校3年生の夏休みから最終試験の11月までの時期が、本当に死ぬかと思っていました。本当に殺されると思っていました。IBに。朝起きても生きた心地がしないみたいな。本当に、朝起きて課題が待っていてお昼ご飯食べても課題が待っていて夜寝る前までもずっと課題やっていて、全然終わらないかつ、10月とかになってくると最終試験の勉強で多分7科目とか、もちろん勉強しなきゃいけないと思うんですよね。 

私たちの代はTheatreのダイレクターズノートブックっていう英語で24枚書く課題とIBの最終試験の勉強が並行していて、結局、課題を終わらせるためには自分が納得しなきゃいけない、自分で妥協点を見つけなきゃいけないから自分を苦しめているのは自分なんだって気づきながらも止められないつらさっていうのが一番つらくって。やっぱり周りがすごく勉強できているように見えちゃう。もちろんできているんですけど。そうすると、こんなに自分は頑張っているのに全然伸びなくってレベルは下で、良いものを作れなくって、っていうので本当に悪循環になってIBに殺されるって思っていました。 

 苦労をしたことを乗り越えた先にどういう変化、結果が待っていましたか。 

 本当にそれは今になってわかるというか、私IBやっているとき、IB大っ嫌いで、なんでこんなに親に高いお金払わしておきながら苦しんでいるんだろう、本当にどMなんじゃないかな、ってずっと思っていたんですけど、卒業してみるとIBで経験したつらさが人生で一番つらくって、それ以外のつらさっていうのが全然つらくないので、大学の課題とかでも、今私ちょうど試験時期で結構(課題に)追われているんですけど、全く怖くもないし、痛くも痒くもない。本当にかかってこいよ、くらいの自信がついたりとか、特に英語に関しては日本の大学に来ちゃっているので、やっぱり自分が話せるようになったんだなっていう実感があったりとか、今になってIBやってよかったなって思っている自分がいてちょっと悔しいっていうのはありますね。 

 逆に少し後悔しているところはありますか。 

 あります。二つあります。一つは青春を送れなかったこと。高校時代って貴重じゃないですか。制服着て学校行くのは高校生がラストじゃないですか。それをほとんどパソコンとともに過ごしてしまったっていうのはもう本当に後悔でしかない。みんなのようにキラキラした高校生活を送れなかったっていうのは後悔です。 

あと、この年で眼精疲労と腰痛を患うと思ってなかったので、本当に体がボロボロになってしまったのは後悔しかないです。みんな、精神疾患に至るんじゃないかぐらいまで追い詰められたりするので、そこは後悔かなと思います。 

 IBに入る前にやっておけばよかったと思うことはなんですか。 

 本を読むことかなと思います。本を読む癖をつけとくっていうのもすごく大事だなって思いました。やっぱりIBだとネットに転がっている情報の信頼性が低かったり、信じていけないような情報が多かったりするので、結局知識の引き出しがこの(本の)中に隠れていたり参考書とか文献とか、学術書に書かれていたりするので、本読む癖がないとそもそも読まないし読むのがつらいということで、せっかく知識を得られるチャンスがあるのにそれを台無しにしてしまうっていうところがあったと思うので、私は本読む癖つけとけばもっと良い点数取れたんじゃないかなって思います。 

 稲生さんにとってIBはどのような存在ですか。 

 ストーカーかな。やっぱりいつどんなときでも常に隣にいるというか、本当に追いかけてくるし追いかけてこないで、って言っているのに追いかけてくる。ただ、本当のストーカーと違うところは利益をもたらしてくれるところなので、悪人ではない、善人なストーカーっていうのがいいかなと思います。 

(聞き手 田辺晟太郎)