1年次必履修科目「産業社会と人間」は、自身の生き方や在り方を探求し、生涯にわたって自身が取り組みたいことの方向性を見つけるためのキャリア科目です。2週間にわたって、「自分が、他者が、社会が幸せになるためにはどうすればよいのか」という問いを軸として、福祉に関する講義、アイマスク体験、視覚障碍をお持ちの講師の方による講演会を実施しました。
講義では、個性が尊重され多様な価値観が許容されるインクルーシブ社会の実現に向けた様々な取り組みを学びました。また、幸福学やポジティブ心理学の知見を踏まえながら、個人にとっての主観的な幸福感を得るための考え方「ウェルビーイング」についても学びました。
アイマスク体験では2人ペアを作り、1人が視覚障碍者(アイマスク着用)、もう1人が介助者として校舎内外を散策しました(感染症対策も講じました)。視界が全くない状況下では、普段通い慣れている学校でも、電気のスイッチを入れる、階段を上り下りする等の日常動作に不安や不便を感じた生徒が多くいました。視覚障碍の方が安心して日常生活を送るためには、介助者の細かな気遣いやたくさんの声掛けが重要であることを体験 的に理解することができました。
講演会では坂戸市在住の井出茂樹様と盲導犬ロンド様を講師にお招きしました。井出様には視覚障碍の当事者としての立場から、クイズや実演を踏まえながら、視覚障碍や盲導犬を取り巻く環境や誤解、視覚障碍者の立場に立った支援の方法を丁寧に説明していただきました。日本の福祉はハード面(設備・機器等)の整備を強化している一方で、ソフト面(人々の心や正確な情報伝播等)の整備が希薄であるとのご指摘を基に、視覚障碍の方を見かけた際に声掛け等の援助を適切な方法で、積極的にして欲しいとのメッセージが強く伝わってきました。特に、『福祉(ふ・く・し)とは、「ふつうに・くらせる・しあわせ」のことである』との御言葉は、非常にシンプルかつインパクトのあるものでした。講演会が終わった後も熱心に質問をする生徒の様子も見受けられました。