第4弾では現在、福島大学 食農学類・農業生産学コースで学ばれている廣瀬辰馬さんにインタビューをしました。廣瀬先輩は、高校時代から人との繋がりを大切にされており、色々な人と関わって自分の学びを深めています。今回のインタビューでは、人とのつながりの重要性や高校時代に身につけたスキル,今役に立っていることなどをお聞きしました。それでは、第4弾の筑坂人のレポートをお届けします。
インタビュー前に廣瀬先輩について調べているときに、福島大学のホームページで廣瀬先輩が農林サークルを立ち上げたという記事を見たのですが、そこではどんな活動をしているのですか。
ちょうど今活動中なので、今やっていることについて話しますね。私は今、川俣町の山木屋地区という場所にいます。そこで、来年の東京オリンピックでメダリストに授与される「ビクトリーブーケ」に使用されるトルコギキョウを育てています。ここは、東日本大震災の際に避難区域になっていました。今は、復興してお花農家さんが戻り始めたということで私たちはお花農家さんの手伝いをしています。
地域の人とも活動しているのですね。しかし、新型コロナウイルスが流行して活動が制限されたと思いますが、そんな中でも、サークルとして行ったことはありますか。
はい。2つほどイベントを行いました。一つは「ベランダ野菜コンテスト」です。これは、新入生に野菜を育ててもらい、SNSで発信された野菜の写真を私たち運営が審査をして賞をあげるといったイベントです。今年の大学一年生は全然土に触れることが出来ない状況なので、何とかしたいと思い実施しました。結果的に新入生に楽しんでもらえた企画となりました。もう一つの活動は農場で交流する会です。農業自体はソーシャルディスタンスをとればやって良いということだったため、少人数での交流をしました。具体的には、サークルとして持っている畑を開放し,田植え体験や,野菜の収穫などを行いました。コロナ禍でもできることを考えて、実行し、参加者が盛り上がってくれたため、やって良かったと思いました。
コロナ禍でも活動を中断しなかったのですね。それにしても、農業を学ぶなら学内だけでもできると思うのですが、なぜ農林サークルを立ち上げたのですか。
元々私は、東日本大震災での「最後の被災地」と呼ばれる福島で農業をすることで災害に強い農業が学べると思って福島大学へ進学しました。しかし、私が所属している食農学類はできたばかりの学類なので先輩もいないし,周りの農家さんとの関わりもあまりありませんでした。私は、そういった事情から自分たちの学類だけでは福島の農業の実態を学びきれないと思いました。そこで、「学類とは別に農業を学ぶことが出来る団体を作りたい」と友達や教授に話しました。その際に、大学で良くしていただいている教授の方に「サークルを作ってみるのはどうかな」と言われたのが始まりです。
え!?食農学類の1期生だったのですね。ここまで話を聞いていて、廣瀬さんは人との繋がりを人一倍大事にしている印象を受けます。コミュニケーションを取る際に、何か心がけていることはありますか。
自分から話しかけに行ってただ話を聞くだけではなく、自分にできることはないかということを常に考えることを心がけています。お願いをする際には、相手に失礼のない範囲で「今こういうことを考えているのですが一緒にやりませんか」と言うようにしています。また、事前にその人のことを調べることもしています。
常に学ぶ姿勢をもってお願いすることで色々な人との繋がりが生まれるのですね。そのように人と繋がっていくことの良さって何ですか?
キヌアという作物について学んだ際に、キヌアを生産している山梨県の農家さんや、キヌアの研究を日本の最先端でされている日本大学の農学部の先生に協力をして頂きました。そのおかげで、自分の「卒業研究」が毎日新聞の農業記録賞というのに載ることが出来たと思っています。また、「キヌアが注目される一因になった」と関係者の方々に言って貰えて嬉しかったことを今でもよく覚えています。福島県にも自分が栽培していた作物をやっているところがあって、つい昨日繋がった人達に「ぜひうちに来て欲しい!」と言われるまでになりました。このように人と繋がることによって新たな研究や活動の幅が広がっていくことが何よりも楽しいと思います。
今、「卒業研究」という言葉が出てきたのですが、「卒業研究」ではどのようなことに取り組んだのですか。
南米原産のスーパーフード「キヌア」に校外学習のホームステイ先(第23期生は1年次3月にカナダ、バンクーバー周辺に約1週間滞在しました)で出会ったことをきっかけに、「埼玉県坂戸市におけるキヌアの優良品種選定」というテーマで卒業研究を行いました。研究者・農家の方との密な交流をもとに、398日間(栽培研究はリスクが高いので、2年次からキヌアの栽培研究を始めました)にわたって栽培研究を続けました。研究を通して埼玉県でのキヌア栽培にはどの品種があっているのかを明らかにするとともに、キヌアの害虫事例なども挙げて、国内のキヌア生産において大きな役割を果たすことができました。結果的に、毎日新聞社主催の毎日農業記録賞では優秀賞をいただくことが出来ました。
ここから398日⁉ということは、2年生からやっていたのですね。2年生の早い時期から卒業研究に取り組む人はなかなかいないので驚きです(笑)2年生では、T-GAP(筑坂-グローバルアクションプロジェクト)を行うと思うのですが、そこでも農業に関することを行ったのですか?
僕はT-GAPで食育をやりました。そのときに、農学,工学,家政,国際等様々な分野を学んでいる人とグループを組みました。理由は、食育といっても色々な分野につながるとところがあると思い、色々な人たちの意見を聞こうと思ったからです。食育という一つのテーマに関して学ぶ背景が違う人がいるのが筑坂の面白いところだと思います。キヌアについて卒業研究で取り組む時も、農学系の人だけでなく家政系の家庭科の人たちや栄養学的なことに詳しい人たちに意見を求めたりしました。
ワークショップを実行する際にNPO法人に食育の仕方をみんなで教わりに行きました。その時にキヌアの話がちらっと出て、その時すでに卒研を始めていたので、積極的に働きかけたところ理事の方が東京農業大学や何人もの生産者の方々とつなげてくださったので、実質的に、自分の卒研にもプラスになりました。
T-GAPで学んだ人との接し方・交渉の仕方をフルに活用して卒研をしたので、ある意味T-GAPが自分にとっての交渉術を学ぶ土台をつくってくれたことになります。なので、T-GAPと卒研は自分の中ではつながった方かなと思っています。
卒業研究,T-GAPともに尽力されていた廣瀬先輩は筑坂で一番印象に残っていることを挙げるとすれば何ですか。
筑坂生活で一番印象に残っているのは専門科目の授業です。3年生の時は畜産コースで豚の世話をしました。3年生になると自分で考えて今日はこうしてみたらもっとよくなるのではないかと思い、担当の先生に相談するようにしていました。その頃、先生や仲間とともに試行錯誤した時期で一番印象に残っています。卒研でも、色々な人と関わる時期だったので日本全国の人たちとお会いしたり、校内では校長先生とお話しする機会が増え、普段離さない先生とも話せたことが良い経験になったと思います。そのため、高校三年生の1年間が僕には濃くて忙しくて、楽しくて今の進路につながっている時期だったかなと思います。
筑坂の3年生はとても忙しいと私も実感しています…。でも、それが濃くて楽しいというのはよくわかります!!しかし、今、学んでいることが将来の自分にどのように生きるのかよく見えない状態です。筑坂で高校生活を送ったなかで今、役に立っていることってありますか?
筑坂で学んだことで今結構役に立っているのが、生物の授業です。生物は担当が安藤先生(理科)だったのですが結構熱心に教えてくれて、高校の知識だけでなく、大学でこんなことをやるよといったことをたまに教えてくれました。そういうことが大学の授業に出てくると「あっ、あのことだ」と思い当たり、今助かっています。筑坂の先生って大学の話も結構してくれるのでそういうのを聞いておくと、もし筑坂のコースと似たような大学の講義でも楽かなと思います。
あと役に立っていることは、部活動で学んだことです。陸上部の顧問の藤原先生がすごく厳しかったんです。ただ、厳しいだけではなくてちゃんと自分のことを見ていてくれて、的確にアドバイスしてくれました。さらに改善点も示してくれる先生だったので、そういう先生から叱られたことや、直せと言われたことをよく覚えています。それで、大学生活で「これ言ったら失礼に当たるかな」とか、コミュニティーのマナーだとかを覚えたので「接し方が良くなったね」と周りの人から言われるようになりました。そういう勉強以外の人格的なことも筑坂で学びました。
言われて見れば、化学でも大学レベルの内容も授業で触れていました!!次に、大学卒業後は具体的に何をしたいのか教えていただけますか。
大きな夢として、最終的にはG-GAP認証の農家になりたいと考えています。ただ単に農業を始めるのではなくて印象に残る農業をやりたいなと思っていて、そういったG-GAP認証をとれば、世界中のどの国に出荷しても高値で売れたりするのでいいなと思っています。ただその分、基準が厳しくなりますが、最終的にはそういうのをできるようになりたいと思っています。
G-GAP認証をとることはすぐにはできないとのことでしたが、大学卒業後はどのような進路を考えているのですか。
私自身、実家が農家というわけではないので、より多くの人と関わりを持つことが大切だと思い、この学生時代に関わりを持ち人脈を広げ、卒業後は福島か仙台の農業系の公務員を目指そうと考えています。なぜかと言うと、農業系の公務員になれば地域の人達と繋がりができます。それはそこに定住する前段階になると思います。つまり、人々と関わりながら自分で農業を始める情報を得ることが出来るからです。
自分で農業を始めるにはお金がかかります。そのため、まずは公務員という職を目指して期が熟したら自分で農業をやってみることを考えています。しかしただ単に農業を始めるのではなく、印象に残る農業をやりたいと思っているので基準が高く大規模なものになってしまうのですが、世界どの国に出荷しても高値で売れるGーGAP認証などの農業を出来るようになればいいなと思っています。そのため、今は大学で勉強をして、沢山人と会ってということを繰り返しています。
大きな夢を叶えるための前段階まで考えているのですね…。では、最後に筑坂生に向けてメッセージをお願いします。
皆さんが今やっていることは絶対無駄ではありません。ただし、もっと人と喋って色々な人たちの話を聞いて下さい。筑坂ってすごく面白い高校なのでそういった経験をすることが大切だと思います。
<インタビューに参加した進路委員の感想>
今まで、アクティヴに活動している人を「大変そうだな」と思って見ていたけれどそういう人は楽しんでそれをやっているのだということが分かったことが一番の収穫となりました。私も廣瀬先輩のように夢中になって学びを深められるような人間になりたいです。
(3年長谷川)
カナダの校外学習から卒業研究へ、筑坂での学びの繋がりが先輩の進路を形作っていく様子がインタビューを通して伝わってきました。一見共通点がなさそうでも、自分の軸に関わるものを積極的に見つけられるような人になりたいなと思いました。貴重なお話ありがとうございました。
(3年澤田)
今回のインタビューを通して、苦手・興味のない分野にも手を出してみようと思いました。色々なことに挑戦するこで、人との関わりを広めたり、自分の興味のあるものを見つけるきっかけになると廣瀬さんから学んだからです。また、コミュニケーション能力は大切だなと改めて感じました。
(1年玉之内)
今回のインタビューから廣瀬先輩が常に自分の夢に向けて探求し続けていることを知り、とても感心しました。自分の進路は廣瀬先輩と異なっていますが、色々な人とコミニーケーションを取るということは今後自分も大切にしていきたいと思いました。貴重なお話ありがとうございました。
(3年金子)
将来が全く決まっていないので、今行っている勉強もTGAPも本当に間違っていないのか、自分の今後につながるのかわからずにいましたが、今回のインタビューを経て、今の経験がいつか自分のプラスと実感できるときが来るのだろうと分かり、今の活動を頑張ろうと思えました。これから卒研を控えているので、今回教えていただいたことを踏まえて頑張ろうと思います。貴重な経験をありがとうございました。
(2年藤井)
廣瀬先輩からT-GAPや卒研、大学でのことなどについてお話を聞いたことで、自分のにとってのモチベーションになりました。特に、早い段階から卒研に取り組んでいたことや、活動を行うなかで外部の人と繋がりをもつなど積極的に取り組んでいたことはとても大切なことだと感じました。廣瀬先輩がおっしゃっていたようにコミュニケーションを大事にして卒研という機会に取り組んでいきたいと思いました。貴重なお話をしてくださりありがとうございました。
(2年カルガン)
今回のインタビューを聞いて自分から行動しないと何も始まらないんだなと改めて実感しました。そのためには基礎知識をつける必要があります、なのでつく坂の先生に自分から聞きに行くようにしたいと思います。貴重な時間を経験できてよかったです、ありがとうございました。
(1年木村)