筑坂人vol.9馬場さん(国際バカロレアコース卒業生)

筑坂IBコースで学んでいる一年次生が、ディプロマを取得してIBコースを卒業した先輩方にインタビューした結果をお届けします。国語の授業の一環として、インタビューのポイントや記事のまとめ方を学んだ後、自ら取材の交渉を行い、それぞれ工夫して記事にまとめています。 

インタビューに協力してくださったのは、2~3期生の卒業生です

国際バカロレアに興味のある中学生の皆さんだけでなく、課題の多さに悩む現役筑坂生にも参考になることでしょう。それでは、どうぞご覧ください。 


馬場愛梨さん

筑坂のIBに入ろうと思ったきっかけは?

私がIBに入ろうと思ったきっかけは中学時代ベトナム在留中に通っていたAIS (Australian International School)ですね。

中高一貫校でIBMYP (11歳-16歳を対象とするIBプログラム)とIBDP (16歳-19歳を対象とするIBプログラム)を導入していたのですが、初めて IBMYPの授業を受けた際に、万遍なく様々な分野を跨ぐ学習形態や、生徒主体で進む授業スタイルが自分自身に凄く合っている感じがしたんです。

IBDPを履修している高校生もグループで研究ポスターを作ったり、団体を設立してイベントの呼び込みをやっていたり、自分の好きな科目でEE(Extended essay; 8000字の課題論文)を書いたり…。「学び」に楽しそうに取り組む姿が私にとって非常に印象的且つ魅力的だったので、帰国後もIBプログラムの履修を決めました。ただ、日本語と英語双方の言語ツールを活用して学びを深めたいという思いがあり、日本語DPを導入している筑波大学附属坂戸高等学校へ進学しました。

IBに入ることを勧めますか?

IB教育の内容と方針が自分自身と合致しているのであれば私は間違いなくIBをオススメします。これは部分的なもので構わないのですが、例えば知識的な部分で貪欲であったり、生徒主体の学習形態を好む傾向にある等…。

IB教育の内容を把握せずに偏差値や英語力、または大学入学の容易さだけを求めてIBを選択した場合「何これ、IB思ってたのと違う。」と確実になるので。(笑)

ただ個人差はありますが、課題の量や質、スケジュールの面ではIBのメンタルへの負担は計り知れないです。これはIBを選択した以上覚悟しなければならない点ではありますが、私はこれ以上に得たものが多かったというのがIBを勧める大きな理由の一つです。

勿論、最終的には「スコア」として自分自身のIBプログラムの中での成果が数値化されますが、スコアがすべてではなく、これを獲得する過程で得たもの、例えば思考力や文章構成力、マネジメント能力等…本当に数え切れない程多くて…。

総じて現状に留まらず、将来に繋げることのできるスキルを多く得ることができました。「長期的有用性のあるスキルを獲得することができる」それがIBプログラムかなと思っています。

IBで得た力とは?

IBで得たスキルは数え切れない程あって…。強いて1つあげるとしたら、私はマネジメント能力ですね。これは端的にいうと、時間と自分のキャパという制限がある中でいかに効率的にハイクオリティなモノを仕上げるかということです。

例えば提出期限があったとします。この場合、期限までクオリティはいくらでも上げられるし、時間も沢山かけられるんです。ただこれに注力しすぎてしまうと他のコトが疎かになる、または結果として自分のキャパシティを超えてしまい収集がつかなくなったりしてしまうんです。そんな有限な条件下でいかに「ここまで」と自分の中で満足のいくクオリティにまで持ってくることができるのか、そのための期間や方法を自分にあった形で見つけることができました。

勿論ですが、思考力も伸びたなあと感じています。

IBでは先生が講義をする形態の授業はほぼ無く、生徒同士でグループディスカッションをして、エッセイを書いて、またグループディスカッションをして、プレゼンテーションをして…というのが大半を占めます。ここから、誰かに頼り続けるのではなく、自分で知識的な欲を追求して、深め、意見交換を通して再度多方面から考察するという、ある意味、思考ルーティンのようなものが身につきました。このプロセスの中で課題発見・解決力や論理的思考や批判的思考力等が身についたように感じます。

更にCASやTheatre等でのグループ活動を通して、集団行動を行う中での自分の強み・弱みを含めた役割の適性も認識することができました。

個人でも集団でもバランスよくスキルの獲得ができるというのもIB教育の特徴の1つかもしれないです。

失敗談

各科目のIA(内部評価)では、3~4000字のレポートを書くのですが、本当に早めに取り組むべきです。

具体例としてバイオロジーのIAを挙げると、実験案の候補が2つあった状況で先生と面談し、第一案が上手くいきそうにないことに開始2週間で気付き、第二案を採用したんです。ただ切り替えた時期が春休みの長期休暇と被ってしまい、先生にお願いして春休みも毎日学校に通い、経過と今後の計画を話して…の繰り返しでした。結局のところ第二案は実験に乗り出すも著しい結果が見られず、データが取れないため第一案に戻ったんです。ここまでで何と約3ヶ月が経過していて、3ヶ月目にしてゼロからのスタートでした。(笑)

今となっては笑い話ですが、当時は身体的にも精神的にもいっぱいいっぱいでした。初の正式な生物分野での実験に加えて、1ヶ月後には同時進行で幾つもの課題を進めなくてはならない状況になることを鑑みずに、進捗も実験期間も課題設定にかかる時間も完全に見誤ってしまいました。やはり早いに越したことはないですね。もう1つIAに限らず課題設定に関して挙げるとすると、個人差はあるとは思いますが、興味のある分野に取り組むことをおすすめします。勿論例外もありますが、やはり興味関心や好奇心はその後の調査や実験、資料収集のモチベーションに繫がるので、全く興味のないトピックに嫌々取り組むのであれば、自分の興味のあるもの、解決したいものを選択すると良いのではないかなと思います。

国内受験の苦労

率直な感想としては、国内受験とIBDP は時期的な相性が悪いです。

元々海外大学への進学を考えていたところを、コロナ禍の影響により8月の終わり頃に国内大学への進学に切り替えたんです。

大学の志望理由書や応募締め切りが9月後半にあるので、8月の終わりから9月上旬までのMockテスト(最終試験の模擬試験)を終えて直ぐに志望理由書に取り掛からないといけなかったのですが、10月後半に控える最終試験に向けた最後の重要な追い込み期間とIAやEE等の課題の最終チェック日とも被っていて…。先生方にも沢山チェックをしていただいて志望理由書や応募書類は提出できたものの、メインとなる大学入試日がIBDP最終試験の2日前とかだったんです。正直面接練習や大学入試のための試験勉強に時間を割くことができるほど余裕が無く、十分な準備をすることができませんでした。ご縁もあり、結果として現在自分の学びたい分野で知識を深めることができていますが、やはりこのようなタイトなスケジュールの中でどのようにバランスを取るのか事前に考え、対策をすることの重要性に気付かされましたね。入試形態によって準備方法は様々ですが、試験対策はやるに越したことはないです。当たり前なことかもしれませんが。(笑) これもまた日本では知名度がまだまだ低いIBを履修するうえでIB生が直面する大きな壁の1つなのかなとも思います。

(聞き手 金澤亜門)